オンラインで心理的安全性を育む 短時間でできる「共通点探し」ワーク
はじめに
リモートワークが普及し、IT企業における開発チームでは、メンバー間のコミュニケーションの質や心理的安全性の確保が喫緊の課題となっています。対面での偶発的な会話が減少する中で、意図的に交流の機会を創出し、チームの一体感を高める取り組みが求められています。
本記事では、日常業務の合間や短時間で手軽に実施でき、メンバー間の親近感を深め、結果として心理的安全性の向上に寄与する「共通点探し」ワークについて、その具体的な実施方法とファシリテーションのポイントを解説します。
共通点探しワークとは
共通点探しワークは、チームメンバーが互いの意外な一面や共通の興味・関心事を発見することを目的にしたアクティビティです。参加者は与えられた時間内に、指定されたテーマや自由なテーマのもとで、他のメンバーとの共通点を見つけ出します。
目的と期待される効果
このワークを通じて、以下のような効果が期待されます。
- 親近感の醸成: 共通点を発見することで、メンバー間に心理的な距離が縮まり、親近感が生まれます。
- 相互理解の促進: 普段の業務では見えない個人的な側面や価値観を知る機会となり、メンバーへの理解が深まります。
- 心理的安全性の向上: 共通の話題を通じて話しやすい雰囲気を作り出すことで、安心して意見を表明できる心理的安全性の土台を築きます。
- コミュニケーションの活性化: 共通点を見つける過程で自然な会話が生まれ、その後の業務での円滑なコミュニケーションに繋がります。
推奨される人数、時間、必要な準備物
- 人数: 3人から8人程度のグループに分けることで、全員が発言しやすくなります。チーム全体の規模が大きい場合は、ブレイクアウトルーム機能を活用して複数グループに分けると効果的です。
- 時間: 10分から20分程度。ワークの導入からグループでの話し合い、発表、振り返りまでを含めて設定します。
- 準備物: 特別な準備は不要です。オンラインでの実施の場合、オンライン会議ツール(Zoom、Microsoft Teamsなど)があれば十分です。共通点を書き出すための共有ドキュメント(Google Docs、Miro、Confluenceなど)を用意すると、発見した共通点を視覚的に共有でき、より効果的です。
具体的な実施方法(オンライン対応)
1. ワークの目的とルールの説明(5分)
会議の冒頭で、ファシリテーターがワークの目的(例:相互理解の促進、心理的安全性の向上)とルールを簡潔に説明します。 * テーマの提示: 特定のテーマ(例:「最近ハマっていること」「学生時代の意外な経験」「休日の過ごし方」など)を設定するか、自由に共通点を見つけるかを伝えます。初めての場合は、具体的なテーマを設定することをお勧めします。 * 共通点探し: 各グループ内でメンバーが自己紹介を軽く行い、共通点を見つけるよう促します。表面的な共通点(例:出身地が同じ)だけでなく、趣味、価値観、考え方など、より深い共通点を探すことを推奨します。 * 見つける数: 各グループで最低3つ以上の共通点を見つけることを目標とします。 * 発表: 制限時間後に、各グループが見つけた共通点を全体に発表する時間を設けます。
2. グループでの共通点探し(5分〜10分)
オンライン会議ツールのブレイクアウトルーム機能を使用して、参加者を3人から5人程度のグループに分けます。各グループは与えられた時間内で、共通点を探します。 * アイスブレイク: 最初は簡単な自己紹介から始め、リラックスした雰囲気を作ります。 * 対話の促進: メンバー全員が均等に話す機会を持てるよう、ファシリテーターはグループ内で発言を促すような声かけをすると良いでしょう。(例:「〇〇さんの休日の過ごし方、気になりますね」「共通点を見つけたら、ぜひ共有ドキュメントに書き出してみてください」) * 共有ツールの活用: MiroやGoogle Docsのような共有ホワイトボード、またはシンプルなチャット機能を使って、見つけた共通点をリアルタイムで記録・共有すると、後で全体発表する際に役立ちます。
3. 全体での共有と振り返り(5分)
ブレイクアウトルームを閉じ、全体セッションに戻ります。各グループの代表者が、見つけた共通点を全体に発表します。 * 発表: 各グループは、見つけた共通点の中から特に印象に残ったものや、意外だったものを共有します。 * 振り返り: ファシリテーターは、ワークを通じて感じたこと、発見があったかなどを問いかけ、参加者からの簡単な感想を促します。 * 「このワークを通じて、チームメンバーの新たな一面を発見できたでしょうか。」 * 「普段の業務では見えない共通点を見つけることで、どのような気持ちになりましたか。」 * これらの問いかけは、心理的安全性への意識を高めるきっかけとなります。
ファシリテーションのヒントと注意点
- ポジティブな雰囲気作り: ワーク開始前に、ポジティブでオープンな雰囲気を作り出すことが重要です。「正解はない」「気軽に話しましょう」といったメッセージを伝えます。
- 沈黙への配慮: オンラインでは沈黙がより目立ちやすいため、ファシリテーターは適度に発言を促すタイミングを見計らいます。しかし、無理強いはせず、参加者がリラックスして話せる空間を意識してください。
- 共通点の深掘り: 表面的な共通点だけでなく、その背景にある興味や価値観にまで踏み込むよう促すと、より深い相互理解に繋がります。(例:「なぜそれにハマっているのですか?」「その経験から何を学びましたか?」)
- 個人的な情報の開示は任意: 参加者が話したがらない個人的な情報を無理に引き出そうとせず、あくまで自発的な開示を尊重する姿勢が心理的安全性を保つ上で不可欠です。
- 時間の管理: 短時間で効果を出すため、厳密な時間管理が必要です。ブレイクアウトルームには残り時間を表示し、終了が近づいていることを知らせるアナウンスを活用します。
このアクティビティが適しているチームの状態や状況
- 新しく結成されたチーム: メンバー間の初期の親睦を深めるのに最適です。
- メンバー間の交流が少ないチーム: 普段の業務で接点が少ないメンバー間のコミュニケーションを促進します。
- 心理的安全性を高めたいチーム: お互いの人間的な側面を知ることで、心理的に安心できる関係性の構築を後押しします。
- リモートワークで孤独を感じやすいチーム: 意図的な交流を通じて、チームの一員としての帰属意識を高めます。
結論
「共通点探し」ワークは、リモートワーク環境下においても、手軽かつ短時間で実施できる効果的なアクティビティです。このワークを通じて、チームメンバー間の親近感を育み、相互理解を深めることは、結果としてチームの心理的安全性を高め、コミュニケーションを円滑にするための重要なステップとなります。
チームのパフォーマンス向上に向けて、ぜひこのシンプルなワークを日常のミーティングや研修の冒頭に取り入れ、チームの一体感醸成に役立ててください。