チームの絆を深める「貢献のタペストリー」ワーク:リモートでも実践可能
チームのパフォーマンス向上やメンバー間のコミュニケーション円滑化は、特にリモートワーク環境下において、多くのチームリーダーが直面する課題ではないでしょうか。メンバー間の物理的な距離が離れている状況では、互いの貢献が見えにくくなり、感謝や承認の機会が減少する傾向にあります。
本記事では、このような課題に対し、チームメンバーがお互いの貢献や良い点を具体的に認め合う「貢献のタペストリー」ワークをご紹介します。短時間で手軽に実施でき、心理的安全性を高めながらチームの協調性を育むことができるアクティビティです。
「貢献のタペストリー」ワークの概要
「貢献のタペストリー」は、チームメンバーがお互いの具体的な貢献やポジティブな側面を付箋に書き出し、共有することで、チーム全体の「良い点」を視覚的に「織り上げる」ようなワークです。各メンバーが、他のメンバーからどのような貢献を認識されているかを知ることで、自己肯定感の向上や相互理解の深化を促します。
目的と期待される効果
このワークを実施する主な目的と期待される効果は以下の通りです。
- 相互承認と心理的安全性の向上: 各メンバーが自分の貢献が認識されていることを実感し、チームへの帰属意識と安心感が高まります。これは「心理的安全性」の醸成に直結します。
- 協調性の促進: お互いの強みや貢献を理解することで、協力関係が強化され、チーム全体の協調性が向上します。
- モチベーションの向上: ポジティブなフィードバックは、個々のメンバーのモチベーションを高め、今後の業務への意欲を喚起します。
- コミュニケーションの活性化: 普段言いにくい感謝やポジティブなフィードバックを伝える機会となり、コミュニケーションの質が向上します。
- チームの一体感醸成: チーム全体でポジティブな側面を共有することで、連帯感や一体感が生まれます。
推奨される人数、時間、必要な準備物
- 推奨人数: 3人から10人程度が最適です。人数が多い場合は、ブレイクアウトルームを活用し、小グループに分けて実施することも検討してください。
- 所要時間: 15分から30分程度。書き出す時間と共有する時間で調整します。
- 必要な準備物:
- オンライン会議ツール(Zoom, Microsoft Teams, Google Meetなど)
- オンラインホワイトボードツール(Miro, Mural, FigJamなど)
- (任意)タイマー
具体的な実施方法(ステップバイステップ)
オンライン環境での実施を想定し、具体的なステップをご紹介します。
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目的の説明(3分)
- ファシリテーターは、このワークの目的が「お互いの貢献や良い点を発見し、共有することで、チームの絆を深め、心理的安全性を高めること」であることを明確に伝えます。
- 「ポジティブな側面に着目し、具体的な行動や成果に基づいて感謝や評価を伝えること」を強調します。
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オンラインホワイトボードの準備(2分)
- オンラインホワイトボードツール上に、各チームメンバーの名前を中央に配置したフレームをそれぞれ作成します。
- メンバーは各自のフレームにアクセスできることを確認します。
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貢献点の書き出し(7分〜10分)
- 各メンバーは、他のメンバー「それぞれ」に対して、その人がチームにどのような貢献をしたか、あるいはどのような良い点を持っているかを具体的に考え、付箋に書き出します。
- 「〇〇さんの□□という行動が助けになった」「〇〇さんの△△というアイデアが素晴らしかった」「いつも〇〇さんがスムーズに物事を進めてくれる」といったように、具体的なエピソードを盛り込むことを促します。
- 一人につき2~3枚程度を目安とします。
- 書き出した付箋は、対象メンバーの名前が書かれたフレームの周囲に貼り付けていきます。匿名での投稿も可能ですが、発言者がわかる方がより効果的です。
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内容の共有とコメント(各メンバー2分〜3分)
- 全員が書き終えたら、一人ずつ順番に、自分の名前の周りに書かれた付箋を読み上げ、それに対する感謝やコメントを述べます。
- ファシリテーターは、各メンバーが全員の付箋を読み上げられるよう、時間配分に注意し、発言を促します。
- 受け取った側は、感謝の気持ちを伝えるだけでも構いません。
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全体での振り返り(5分)
- ワーク全体を振り返り、感じたことや気づきを共有します。
- 「どのような点が印象に残ったか」「このワークを通して何を感じたか」といった問いかけを行い、心理的安全性の向上や相互理解の深化を促します。
実施上のポイントとファシリテーションのヒント
- ポジティブな雰囲気作り: ファシリテーターは常に前向きな姿勢を保ち、参加者が安心して意見を出しやすい雰囲気を作ることが重要です。
- 具体性の促進: 「頑張っている」といった抽象的な表現ではなく、「〇〇のタスクで××という行動をしてくれて助かった」のように、具体的な貢献内容を書き出すように促します。これはフィードバックの質を高め、受け取る側の納得感を深めます。
- 全員参加の促進: リモート環境では発言しにくいメンバーもいるため、ファシリテーターが意識的に声をかけ、全員が発言する機会を設けるようにします。
- 時間の厳守: 各ステップの時間を明確に伝え、タイマーを使用するなどして時間管理を徹底します。特に書き出しや共有の時間が長くなりすぎないよう注意します。
- アウトプットの活用: 完成した「貢献のタペストリー」は、スクリーンショットを撮ってチームの共有スペース(SlackチャンネルやConfluenceなど)に共有すると良いでしょう。定期的に見返すことで、チームのポジティブな側面を常に意識できます。
リモートワーク/オンライン環境での実施方法
オンラインホワイトボードツールは、リモートワークにおけるこのワークの実施に不可欠です。
- Miro / Mural / FigJamなどの活用: これらのツールは、共同編集可能なキャンバス上で付箋を自由に配置できるため、まさに「貢献のタペストリー」を視覚的に作り上げるのに最適です。テンプレート機能を利用すると、準備時間をさらに短縮できます。
- 非同期での実施: 全員でリアルタイムに集まるのが難しい場合、一定期間(例:1週間)を設け、各自が都合の良い時間にオンラインホワイトボードに投稿していく非同期形式も有効です。最後にオンラインミーティングで読み上げ、共有する時間を設けることで、リアルタイムの交流も確保できます。
- Slackなどのチャットツールとの連携: ワークの結果をチャットツールで共有したり、非同期で感謝のメッセージを送り合うチャンネルを設けることで、継続的な相互承認の文化を醸成できます。
このアクティビティが適しているチームの状態や状況
- 新しいプロジェクトやチームが発足した際のアイスブレイクとして。
- チームの士気が停滞していると感じる時、活性化を促したい時。
- 定期的なチームビルディングの一環として。
- メンバー間のコミュニケーション不足を感じ、相互理解を深めたい時。
- 心理的安全性が低いと感じられ、率直な意見交換が少ないチーム。
まとめ
「貢献のタペストリー」ワークは、リモートワークの課題に対し、手軽に楽しく実践できる強力なツールです。このワークを通じて、チームメンバーがお互いの存在をより深く認識し、感謝と承認の文化を育むことで、結果としてチーム全体の協調性とパフォーマンス向上に繋がるでしょう。
日々の業務の中に、このようなポジティブな相互作用を生み出す機会を意図的に設けることが、持続可能な強いチームを築くための鍵となります。ぜひ、この「貢献のタペストリー」ワークを皆様のチームに導入し、その効果を実感してください。